豪ドルという相棒を連れて旅に出るなら、その財布を誰が満たしているかを知っておきたい。オーストラリアの輸出の33.3%は中国向けで、2位の日本の13.0%を2倍以上引き離している。金融先物取引業協会が2026年3月26日に出した豪ドルの基礎資料には、その内訳が表で載っている。数字を順に拾いながら、豪ドルの値動きの裏に誰がいるのかを確かめていく。
金融先物取引業協会の資料「オセアニア通貨の基礎知識~オーストラリア」は、オーストラリア外務・貿易省のデータをもとに、2024年度の輸出先と輸入先の上位10か国を並べている。オーストラリアの財政年度は7月1日から翌年6月30日までなので、2024年度は2024年7月から2025年6月の1年ぶんにあたる。
| 順位 | 輸出先 | 輸出額(億豪ドル) | シェア |
|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 1,704 | 33.3% |
| 2 | 日本 | 665 | 13.0% |
| 3 | 韓国 | 388 | 7.6% |
| 4 | 米国 | 366 | 7.1% |
| 5 | インド | 239 | 4.7% |
1,704億豪ドルを665億豪ドルで割ると、2.56倍になる。3位の韓国と4位の米国を足しても754億豪ドルで、中国1国の半分にも届かない。輸入の側でも中国は1位で、1,141億豪ドル、シェアは26.0%だった。売る相手としても、買う相手としても、中国が最大の取引先ということだ。
中身を見ると、なぜ中国なのかが分かる。同じ資料の品目別の割合(2025年)では、鉄鉱石・鉱物が36%、石炭が14%、その他の鉱物性燃料が16%。資源だけで輸出の6割を超える。農産物は17%、非貨幣用の金が13%だった。
鉄鉱石は製鉄の原料である。世界で最も多く鉄鉱石を輸入しているのが中国で、資料の注記によれば輸入額ベースで世界全体の約7割を占める。中国向けは、オーストラリアの鉄鉱石輸出の約6割にあたり、逆に中国は鉄鉱石輸入の約7割をオーストラリアに頼っている。武器屋にたとえるなら、店の売上の大半を1人の常連が支えていて、その常連も仕入れの大半をこの店に頼っている関係だ。
金額は値段とともに大きく動く。対中の鉄鉱石輸出額は、2019年の790億豪ドルから2021年には約1,300億豪ドルまで増えた。2年で約1.6倍である。資料は、この伸びが主に鉄鉱石価格の上昇によるものだとしている。その後は価格が下がり、2025年は864億豪ドルになった。
輸出量のほうは高い水準を保っているという。つまり、同じ量を売っていても、値段しだいで入ってくる豪ドルの額が数百億単位で変わる。ここが資源国の通貨を読むときの厄介なところだ。
豪中の関係は、ずっと平穏だったわけではない。資料によると、2017年ごろから関係の悪化が表に出始め、2020年にはオーストラリアが新型コロナウイルスの発生源などについて独立調査を求めたことをきっかけに、中国が大麦、ワイン、石炭など複数の豪州産品に輸入規制をかけた。
2023年以降、中国は大麦や石炭など一部の規制を段階的に解いている。政治で揉めても鉄鉱石の取引は止まらなかった、というのが数字から読めることだ。一方で、中国向けのシェアはピーク時の4割超から3割程度まで下がり、日本や韓国、インドへの輸出が広がっている。
ここで早合点しないでおきたい。鉄鉱石が上がれば豪ドルも上がる、と単純には言えない。資料はIMFの一次産品価格指数と豪ドル相場を並べ、長い目で見れば一定の連動があると認めつつ、近年はその関係がはっきりしないと書いている。
例として挙げられているのが2021年から2022年だ。世界的に資源価格が上がり、一次産品価格指数は大きく上昇した。それでも豪ドルは比例して上がらず、1豪ドル=0.6〜0.7米ドル台のレンジで推移した。米国との金利差や、世界のリスク選好、中国経済の動きといった資源以外の要因が、豪ドルに効くようになっているという。
| 見る数字 | 資料に載っている値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 対中輸出のシェア | 33.3%(2024年度) | 中国の景気が輸出額に響く度合い |
| 対中の鉄鉱石輸出額 | 790億→約1,300億→864億豪ドル | 価格で数百億単位が動く |
| 豪ドルの取引高 | 1日467億ドル・シェア4.9%(2025年) | 世界6位の取引規模 |
| 対円の水準 | 近年は60円〜110円程度 | かつては400円を上回った時期もある |
豪ドルは、カンガルーの国の通貨でありながら、その財布の3分の1は北の大国とつながっている。相棒の機嫌を知りたければ、相棒だけでなく、相棒の一番の取引先の顔色も見ておく。それが豪ドルと長く旅をする者の作法だ。
最終更新:2026年9月25日
中国である。金融先物取引業協会の資料によれば、2024年度の輸出額は中国向けが1,704億豪ドルで、全体の33.3%を占める。2位は日本の665億豪ドル(13.0%)、3位は韓国の388億豪ドル(7.6%)だった。
中心は鉄鉱石である。中国向けはオーストラリアの鉄鉱石輸出の約6割を占め、中国も鉄鉱石輸入の約7割をオーストラリアに頼っている。輸出全体では、鉄鉱石・鉱物が36%、石炭が14%(2025年)を占める。
必ずそうなるとは限らない。長期では一定の連動が見られる一方、2021〜2022年は一次産品価格指数が大きく上がっても、豪ドルは1豪ドル=0.6〜0.7米ドル台にとどまった。金利差やリスク選好など資源以外の要因も効いている。
割合では下がっている。資料によると、商品輸出に占める中国向けの割合はピーク時の4割超から3割程度になり、日本、韓国、インドなどへの輸出が広がっている。それでも最大の輸出相手国であることは変わらない。