円の相場が荒れたとき、王国の財務省は介入という大魔法を使うことがある。その記録は、あとから公式の書庫に載る。2026年4〜6月の介入額は11兆7,349億円。ただし使われたのは、4月30日・5月4日・5月6日の3日だけだった。財務省が2026年8月7日に出した日次ベースの表に、そう書いてある。3か月ずっと魔法が飛び交っていたわけではない。数字を順に拾い、介入の記録をどう読めばいいかを確かめていく。
財務省の「外国為替平衡操作の実施状況(令和8年4月~令和8年6月)」は、合計額のすぐ下に実施日と金額と売買通貨を並べている。中身は次の3行だけだ。
| 実施日 | 金額 | 売買通貨 |
|---|---|---|
| 2026年4月30日 | 6兆2,787億円 | 米ドル売り・日本円買い |
| 2026年5月4日 | 7,802億円 | 米ドル売り・日本円買い |
| 2026年5月6日 | 4兆6,759億円 | 米ドル売り・日本円買い |
| 合計 | 11兆7,349億円 | — |
3回とも、ドルを売って円を買っている。円安を止める向きの介入だ。いちばん大きいのは4月30日の6兆2,787億円で、四半期の合計の53.5%を1日で占める。しかも5月4日はみどりの日、5月6日は憲法記念日の振替休日で、どちらも日本の祝日にあたる。4月30日から5月6日まで、わずか1週間に3回の大魔法が集中していた。
ここに落とし穴がある。財務省は介入の記録を2種類に分けて出している。総額は1か月ごと、実施日・金額・売買通貨の詳細は四半期ごとだ。財務省のページは、統計の時期をそう説明している。
月ごとの総額しか手元になければ、「4月から6月に11兆円」という一行から、どの日に動いたかは読めない。チャートで円が急に跳ねた日を見つけても、それが介入の日だったかどうかは、四半期の表が出るまで確かめようがないのだ。相場の急変を「介入の日」と言い切れるのは、日次ベースの表に日付が載ってからである。
次の記録は、さらに大きい。財務省の月次ベースの公表では、2026年7月30日から8月26日までの介入額が15兆3,993億円だった。4〜6月の3か月ぶんの11兆7,349億円を、4週間で上回っている。
ところが、この15兆円がどの日に使われたのかは、まだ公式には分からない。月次の公表には合計額しか載らないからだ。7〜9月の日次ベースの表は、財務省の予定で2026年11月2日から9日のあいだに出る。それまでは「この日に介入があったはずだ」という観測は、観測のままにしておくほかない。
月次の表を読むとき、もうひとつ気をつけたいのが期間の切り方だ。7月30日から8月26日、8月27日から9月28日というように、月末の数日前で区切られている。暦の8月1日から31日ではない。
| 月次ベースの対象期間 | 介入額 | 公表日 |
|---|---|---|
| 2026年7月30日〜8月26日 | 15兆3,993億円 | 2026年8月28日 |
| 2026年8月27日〜9月28日 | 0円 | 2026年9月30日 |
| 2026年9月29日〜10月28日 | 未公表 | 2026年10月30日(金)午後7時の予定 |
8月27日から9月28日の介入額は0円だった。0円という数字も公式の記録である。「介入があったらしい」という噂が流れた日があっても、この期間について言えば、公式の書庫には何も書かれていない。噂と記録は、別の棚に並べておくべきだ。
介入は、王国が持つ大きな魔法だ。ただ、その魔法がいつ放たれたかを知る手段は、公式の書庫に限られている。次に書庫が開くのは10月30日の夜と、11月2日から9日のあいだ。そこまでは、自分の装備(資金)を守る準備を淡々と続けておく。それが、大魔法の飛び交う戦場を歩く者の作法だ。
最終更新:2026年10月4日
3日である。財務省の日次ベースの公表によれば、2026年4月30日に6兆2,787億円、5月4日に7,802億円、5月6日に4兆6,759億円で、合計11兆7,349億円だった。売買通貨はいずれも米ドル売り・日本円買い。
四半期ごとの日次ベースの公表で分かる。月次ベースの公表は合計額だけで、実施日・金額・売買通貨の詳細は四半期ごとに出る。2026年7〜9月分は、財務省の予定で11月2日から9日に公表される。
月次ベースの対象期間は暦の月と一致しない。2026年7月30日から8月26日の介入額が15兆3,993億円、8月27日から9月28日は0円だった。
財務省の公表予定では、9月29日から10月28日の月次ベースが2026年10月30日(金)午後7時、7〜9月の日次ベースが11月2日から9日である。予定は変更されることがある。